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落葉
長野県軽井沢町

秋に手おされて(恋)

たとえば秋の風圧の中にいて
耳がゆるやかに孤独をとらえるとき
胸の奥に振動するおぼろげな記憶

細長いこころの隙間に流れ込んでくる
親しげで冷ややかな光
帰りみちを見失わぬように
心許なく歩を進める
たやすく崩れてしまう果肉に比べ
落ちてもなお光り続けるたましいのような葉は
ずぶ濡れて
さらに明るいほほえみを宿した

赤や黄色の静かな花火を
きみは見ていたはずなのに
美しい失語の瞬間に立ち会い
目と唇で「生きる」と描いてすぐ
土の大きな愛に召されていったのだ

いくつもの捨て石が
溶けた川縁のみどりの中に沈み
おもりのようにぼくを引き止めている

落ちたいのち
落ちてなおとうといいのち

赤いぼくのてのひらが
ゆっくりと浸透する虫の音に似て
いつまでも思い出を振動させる

原 静鳴

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